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環境DNAを活用した生物・ウイルスの可視化

2024年2月16日
山口大学 社会建設工学科 赤松研究室

 近年、水を汲んでその中のDNA を分析するだけで、水域における生物の生息の有無や密度・個体数を明らかにすることが可能な環境DNA技術が開発され、広く活用され始めています。この環境DNAは海や川、土壌、大気などの環境中に存在する微量な生物由来のDNAの総称です。環境DNAは生物多様性のモニタリングなどで幅広く使われつつあり、特に生態学や保全生物学において革新的な技術として注目されています。しかし、この環境DNAは河川・海における水産資源管理や感染症対策としてウイルスのモニタリング等への幅広い活用が期待されております。例えば、図-1に示すように実際に潜水目視によって得られるアユの現存量と環境DNA濃度には明確な相関があり、アユの現存量を環境DNA濃度から把握可能であることが明らかとなっています。この成果に基づいて、アユの環境DNA濃度から産卵場を特定したり、ダムをはじめとした河川構造物等がアユの資源量に与える影響を評価する試みも進められています。また、図-2には市内の下水処理場で採水した下水中の新型コロナウイルスの濃度と市内の新規感染者数の関係を示しており、下水中のウイルス濃度から感染者数の増減を把握することが可能であることが明らかとなっています。将来的には下水や大気中のウイルスモニタリングに基づく感染症の監視システムが構築されることが期待されています。

 今後、環境DNAを活用した生物・ウイルスの可視化によって、様々な生物種を対象として広域の生物の分布や密度の把握し、適切に保全・再生することにより、豊かな生物多様性を維持することが可能になるとともに、環境中のウイルスのモニタリングにより、様々な新興感染症のパンデミックを未然に防ぐことで安全・安心な社会を構築することができると考えられます。環境DNAが切り開く持続可能な社会の構築にご期待ください。

図1図1
図2図2
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